木には温かみがあると聞いたことがある方はたくさんいらっしゃると思います。
感覚的には、自然な見た目からぬくもりを感じることもありますね。
一方で物理的には、コンクリートや金属に触った時には冷たかったり熱かったりすることがありますが、木だと極端に温度が変わらないですよね。
今回は物理的な側面から、何で木には温かみがあるのかを調べたいと思います!
Contents
なぜ木には熱が伝わりにくい?
木の温度変化がコンクリートや金属に比べて少ない理由
それは、ほかの素材に比べて、木には周囲の熱が伝わりにくいという性質があるからです。
フライパンの柄に木が使われていることがありますが、フライパンが熱くなっても持ち手の柄の部分が熱くならなかったり、触ったときに温かく感じるのは周りの熱の影響を受けにくく安定した温度でいるためなんですね。
では、木に周囲の熱が伝わりにくい理由を見ていきましょう!
木は凸凹している
熱が伝わるためには、密着する面積が影響します。
ツルっとしているものは接着面積が大きくなるために熱が伝わりやすく、触れる面積が小さくなると熱も伝わりにくくなるということですね。
木には表面に微細な凹凸がたくさんあり、内部に空隙(くうげき)もあるため、触り心地が良く、ほどよく水分(汗)を吸着することなどが影響すると言われています。
木の手触りというのは、自然素材だからこそ感じるものかもしれませんね。
かさ比重が小さい⇒断熱性能が高い
かさ比重(ひじゅう)とは、体積に占める質量の比率です。
比率のため単位はありませんが、例えば水は1リットル(1,000cm3)あたりの質量が1kg(1,000g)で比重は1です。
一定の体積あたりの質量を表すかさ比重が分かると、量(体積)が分かっているときに大まかな重さ(質量)を簡単に計算することができるし、逆に重さがどれくらいのボリュームになるのかも分かります。
また、異なる素材の性質などを比較するときにも便利です。
木材などは1m3あたりの質量(t)の単位でかさ比重を計算した方がイメージしやすいかもしれません。
単位を間違えると全然違う数字になってしまうのでお気をつけください。
素材のかさ比重の比較
冒頭に出た他素材と木の比重を比較してみましょう。
水 | 1 |
木 | 0.3~1.0程度(木が乾燥した状態の比重) |
コンクリート | 2.3程度(鉄筋コンクリートは2.45程度) |
鉄 | 7.85 |
木はコンクリートや鉄(金属)と比べて比重が小さいですね!
木の比重は水の比重である1よりも小さいため、木は水に浮きます。
しかし、0.3~1.0程度というのは、3倍程の違いがあり、すごい幅がありますね。。。
コンクリートや鉄は同じ体積だと比重の小さい木の8~26倍程の重さになります。
比重が大きいということは、間隙がなく詰まっているということなのでコンクリートや鉄は木に比べて熱が伝わりやすいと言えそうです。
素材の熱伝導率の比較
どれくらい熱が伝わりやすいのかを表す指標として、熱伝導率があります。
エネルギーは大きい方から小さい方に移動するため、熱も熱い方から冷たい方へ移動します。
熱伝導率が高いものは、熱いものに触れるとその熱を素早く奪います(=熱いものはすぐ冷める)。
反対に、熱伝導率が低いものは、熱いものに触れても熱の移動はゆっくり行われます(=熱いものはゆっくり冷める)。
先ほどのかさ比重を比較した素材に空気もあわせて熱伝導率を見てみましょう!
※下記数値は筆者がページ最下部の参考サイトなどで調べ整理した値です。あくまで素材の比較を行う参考値としてご覧ください。
素材 | 単位:W/m・K |
空気 | 0.025 |
水 | 0.6 |
木 | 0.12~0.4 |
コンクリート | 1.3~1.6 |
鉄 | 67 |
水~鉄は、かさ比重と同じ順番に並びました!かさ比重と熱伝導率には相関関係がありそうです。
しかしながら、やはり特筆すべきは空気の熱伝導率の小ささです。
前の項に木がデコボコしていて間隙が
木は間隙に空気をたくさん含んでいる!
熱伝導率が他素材より極めて小さい空気があると熱が伝わりにくくなると考えられます。
例えば発砲スチロールのように空気をたくさん含む軽い素材は、空気層が多く熱が伝わりにくいため保温容器や断熱材として使われます。食材が腐ったり痛んだりしないように、氷や保冷材と一緒に発泡スチロールの箱に入れたりしますよね~
では、木はどうなんでしょうか?
皆さんのご想像のとおり、木が熱を通しにくいのは、木の内部に無数の空隙があり熱伝導率が小さい空気が多く含まれているからです!
木は植物であり、内部には水や養分を運ぶための管やたくさんの細胞があります。木の内部の空隙は、この管や細胞から水分が抜けたためできた隙間です。
つまり、空気をたくさん含む=空隙をたくさん持つ素材は熱伝導率が小さい(断熱性が高い)と考えられますね!
そして、木と鉄のかさ比重の差は最大26倍程でしたが、熱伝導率は最大558倍もの差が出ました。
これは、かさ比重以外に金属は熱を伝えやすい性質を持っていると考えられますね。
木のかさ比重の理由と用途
木のかさ比重が小さいことが他の素材と比べて低い熱伝導率=高い断熱性につながっていることが分かりました。
しかしながら、木のかさ比重にも0.3~1.0程度と大きな幅があったため、木材によっても断熱性能に違いがありそうです!こちらについても調べてみたいと思います。
樹種ごとのかさ比重
木のかさ比重が異なるのは、木の種類による影響が大きいです。
固い木、柔らかい木などがありますがそれは樹種によって、木材の基本的な構造や性質などは決まっているからです。
樹木の大部分を占める基本的な成分(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)は決まっているため、かさ比重の差はその樹種がどれだけ間隙をもつかにより決まると考えられます。
もちろん同じ樹種でも育つ環境や個体差によって若干の幅は出てきますが、日本でよく見られる樹種のかさ比重は下表のとおりです。
スギ(針葉樹) | 0.38 |
ヒノキ(針葉樹) | 0.41 |
アカマツ(針葉樹) | 0.53 |
ツガ(針葉樹) | 0.51 |
ブナ(広葉樹) | 0.63 |
アカガシ(広葉樹) | 0.92 |
キリ(広葉樹) | 0.29 |
ケヤキ(広葉樹) | 0.62 |
日本の木で最もかさ比重が小さいのは0.29のキリ(桐)です。
桐箪笥(きりだんす)などは聞いたことがあるかもしれませんがキリは衣類を入れるタンスや貴重品を保管する金庫の内部の材料として重宝されてきました。
万一火事になったとしても、キリは熱伝導率が低く火が回るのに時間がかかるため桐タンスや金庫に入れておいたものは燃えずに済んだところもあるようです。
スギやヒノキなどの人工林によく見られる針葉樹はそれぞれ0.38、0.41と木材の中では比重が小さいほうです。軽くて断熱性に優れるという点では、家屋などの建築材料として適しているようですね。
かさ比重が大きい方はというと、ケヤキの0.62やアカガシの0.92など広葉樹の方が比重が大きい印象です。しかしながら、最もかさ比重が小さいキリが広葉樹というのもおもしろいですね!
木のかさ比重の違いにより適した用途は?
フライパンの柄や、断熱をしたいような箇所に使う場合はかさ比重の小さい樹種を用いるのが良さそうですね!
温かいものをいつまでもアツアツで食べられるように、食器などにも良いかもしれません^^
一方で、かさ比重が小さいということは密度が小さく柔らかいという特性も併せて持ちます。
例えばかさ比重が小さいキリ、スギ、ヒノキなどは爪でひっかいても痕を残せるくらい柔らかいです。
かさ比重の大きい樹種は、熱伝導率は木材の中では高いかもしれませんが密度が大きく硬いという特性を持ちます。
比重の違いにより断熱性や硬さがあり、用途にあわせてさまざまな木材が使われていますので是非探してみてください!
比重が小さくて軽くて粘り強いスギは、サーフボードとして使うことだってできちゃいます!
杉のサーフボードの情報はこちら↓
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まとめ
- 木は内部に間隙がたくさんあり、他の素材に比べてかさ比重が小さい
- かさ比重が小さい木は熱伝導率が低く断熱性が高い
- 樹種により間隙の量が異なり、かさ比重の大きさが異なる
- かさ比重の違いは硬さ・重さの違いにもなり、それぞれ適した用途がある
《参考》
よく分かる最新木材のきほんと用途・秀和システム