2022年はすごく寒かった印象がありますが、3月になり春の陽気になってきました。
ぽかぽかと暖かくなり気持ちの良い日が続きますが、花粉症の方にとっては地獄のような季節と聞きます。。。
筆者はまだ花粉症を発症しておらず、花粉に抵抗はないのですが家族は発症しており洗濯物や布団を外に干すこともできません(;^_^A
今回は花粉症と林業の関係について調べてみました!
Contents
花粉症のメカニズムとは
花粉症は花粉に含まれる抗原タンパク質が引き起こすアレルギーで、鼻炎や目のかゆみ・腫れなどが代表的な症状です。
花粉症の原因は花粉だけではない!?
花粉アレルギーは「花粉のキャパを超えると発症する」という話を聞いたことがあるかたもいらっしゃると思います。
キャパが大きいと思っていても、花粉に触れる機会がおおければすぐにそのキャパが埋まってしまうかもしれないのでまだ発症していない方も花粉には注意が必要ですね。
そのほかにも、花粉症を発症される方の増加には下記のような原因があるようです。
①スギ花粉量の増加
⇒花粉を作る大きく育ったスギが増えたことなどの影響
昔に比べて出る量が増加!?
②大気汚染
⇒排気ガス、微粒子などが抗体を産出することで花粉症の発症を促進
呼吸器の調子が悪いと花粉が体調不良の原因になることも
③食生活・生活リズムの変化
⇒高脂肪・高タンパクの食生活や不規則な生活・ストレスの多い生活などがアレルギーを起こしやすくしている
④住宅環境の変化
⇒通気性の少ない住居・環境がダニ・カビの温床をつくり、アレルギーを起こしやすくしている
都市部の舗装された環境では花粉が舞うので山間部よりむしろ多い!?
(広い空間があり、山や川などに花粉が吸着されれば街に比べて舞い戻ってこない)
花粉症を引き起こす樹木
日本の樹木
日本で花粉症といえばまずスギ花粉症があげられます。
患者数は国民の1/3ともいわれています。。。
スギと近い種のヒノキの花粉にもスギと同様に抗原性があるなど、日本ではこれまで30種程度の樹種で花粉症が報告されています。
その多くは雄花から花粉を出し、風に乗せて雌花に届けることにより繁殖をおこなう風媒花(ふうばいか)というものをもっています。
スギ・ヒノキの雄花や雌花は葉に付きます。花粉の時期になると、雄花や雌花の色・葉自体の枯れた色でスギやヒノキは黄色~茶色に色づきます。
普段は青々としているスギやヒノキの山が茶色っぽくなっているのを見たときは花粉に要注意です!
世界でも花粉症はあるの?
スギやヒノキは日本の固有種であり、それらの樹種がない他の国ではどうなっているの?と疑問に思いますが、世界にも花粉症はあります。
世界的には、カバノキ科の樹木の花粉症が多くみられています。これはシラカバ花粉症とも呼ばれ、北半球の温帯から亜寒帯に分布するカバノキ科全種が花粉症の原因となっています。
日本・本州でも六甲山周辺でのオオバヤシャブシによる症例が知られています。カバノキ科花粉症では、食物アレルギー(口腔アレルギー症候群:OAS)を発症しやすいなど、抗原タンパク質の種類によりスギやヒノキと異なる症状が出るようです。
スペインやイタリアなどでは、オリーブの花粉症に悩まれる方もたくさんいらっしゃるようです!
オリーブというと意外ですが、日本でも生産が盛んな瀬戸内海の近辺ではオリーブ花粉症の方もいらっしゃるそうです(;^_^A
オイルになるし、実を食べても美味しいしいいイメージしかないオリーブにも花粉症があるなんて意外でした~
樹木により花粉が放出される時期がちがう?
↓の写真をご覧ください。
左側のスギは黄色・茶色に色づき花粉を蓄えているのが分かりますが、右側にある桧はまだ青々としています。
スギに比べてヒノキの花粉の時期は遅れてやってきますので、植林されている樹種によって注意が必要です!
また、スギについても日当たりの良いところは色が濃くなっている様子から、雄花・雌花の育成には時期だけでなく日当たりなどの環境も影響していることが考えられますね。
桜の開花が温かい南から北上するのと同じように、スギやヒノキの花粉の放出も南から北上していきます。
花粉量は予測できるの?
花粉の飛散量は年によって大きく変動します。
これは、以下の要素により花粉をつくる雄花の量に豊凶があるためと考えられています。
・前年夏の気温が高く日射が多いと雄花がたくさん作られて花粉が多くなる
・前の年に雄花が多いと翌年の雄花は少なくなり、前の年に少ないと翌年は多くなる
他にも、冬に雄花の芽を観測して翌年の花粉量を予測する手法などもあるようです。これが一番精度高そうな気がしますが、樹種による観測方法の違いやマンパワーの問題など課題もあり、新しい観測手法の開発も望まれています。
樹齢により花粉の量って変わるの?
スギやヒノキはその粘り強さ、強度の割に軽いことなどが建築資材などに適することから、日本の各地で植林され、今や日本を代表する人工林の樹種となっています。
しかしながら、現在花粉の発生源となっているのは主に拡大造林期に植えられた人工林です。。。
大変衝撃的なのですが、スギは20年生ごろから雄花をつけはじめ、50年生までは花粉量が増加してその後は横ばいでずっと出続けるそうです。
地域・品種・施業によって花粉の量も異なるでしょうが、人工林の林齢が大きくなればなるほど花粉の量も多くなる傾向にあるようです。。。
花粉の少ない杉があるの!?
花粉症で多くの皆様が悩まれている現状を受け、花粉を出す量が少なかったり、まったく出さなかったりする品種改良も開発されています。
(参考)↓林野庁・花粉の少ない苗木を植えよう
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/hinsyu.html
「スギ」や「ヒノキ」と聞くだけで、木材のイメージというより花粉の悪いイメージが先行してしまっているなと感じることが多々あります。。。
今後植えられる次世代の木が大きくなるころには花粉症がなくなるといいですね(^^)
次世代の杉を植えていくためにも、まずは今大きく成長した杉を伐採し、適切に活用していくことが大切です!
(出展: 林野庁)
木を使う林業振興が花粉症対策になる!?
花粉量や発生源の推定は医療や生活管理を含む花粉症対策の基盤であり、花粉量の発生源対策として「林業」に大きな期待が寄せられています。
というのも、スギ・ヒノキ花粉症ではその発生源である人工林を伐採することが花粉量の削減に大きく寄与するためです。
ただし、森林の様々な機能・自然の働きを考えると一斉の急激な伐採は抑え、計画的に行う必要があります。
皆伐(かいばつ)や全伐(ぜんばつ)と言われる、間伐後に行われる伐採をおこなうとはげ山のような見た目になり、林業は自然破壊であると思われる方もいらっしゃいますが、計画的に更新することで俯瞰的にみると複数世代の樹林がある多様性のある山林になります。
↓の風景なども、手前には若い林があったり、間には天然林があったりと多様性に富んだ環境と感じます!
人工林として更新する際には花粉の少ない苗木を植えることで、その更新した木が大きくなった時にも花粉の発生を少なくすることが期待されますね!
まとめ
伐採し木を使うことが、花粉をたくさん出す樹齢の木を減らし、次世代の木を植える際に花粉の少ない品種への転換も進み、二酸化炭素をたっぷり吸収して森林の多面的機能を発揮することにもつながります。
森林のサイクルをまわしていくことがより良い環境づくり・おいしい空気づくりにもつながり、花粉症を発症しにくい環境づくりにつながるかもしれません。
木は決して人間の敵ではありませんので、親しんでもらえるようなモノづくりや発信にも取り組んでいきます!
花粉アレルギーの原因を減らすことにもつながるスギやヒノキの活用を是非前向きにとらえて頂けると幸いです(^^)
参考・引用文献
・森林学の百科事典(日本森林学会 編)
追伸
スギやヒノキの製品には花粉は含まれていませんので安心してください!!!